いのちをつなげ

 

おはようございます

今日は、少しディープなお話かも。

長くなるのでお時間ある方はお付き合いください

 

その子牛は、予定日より1ヶ月近く早く生まれた。

主人が片手で抱き抱えられるほどだったから

おそらく体重は20キロ台前半くらいしかなくて

最初にみたとき、中型犬かと思うサイズ感に

ほんとに牛?って印象だった。

主人とオニチビ、って呼んでいた

それでも、ミルクを飲む気は他の子と負けないくらいあって

他と同じだけのミルクの量を下痢せずやり続けて、

生まれて2週間後、市場に出品した。 

 

その日は他にもうちから数頭出品した中で、

一番のチビは買いに来た農家に見向きもされず

案の定、買い手ナシでうちに戻ってきた。

肉用の子牛が初生牛として上場できるのは

生後2ヶ月まで。それを過ぎると、さらに値段がつかなくなる。

私たちとオニチビとの戦いはその後だった。

 

下痢をして飲まなくなって、治ったかと思えばまた飲みがわるくなって。

ある日呼吸が変だなと思って獣医さんよんだら

重度の肺炎と言われて、いつ死んでもおかしくない状況にまでなった。

お母さん牛の体の中にいる時、最後の1ヶ月で発達する肺の機能が

未発達のまま、生まれてきちゃったって獣医さんは言っていた。

それでも、獣医さんの点滴とオニチビの根気で

なんとか持ち堪え、そこからは他の子より手厚く、

頻回でミルクをやること10日間。

ついに今日、オニチビは旅立つよ

 

主人がポロッと

うちを出られたとしても、次の農家でこいつは長く生きられるかなあ

って言ったのが忘れられない。

見切りをつけるのは、簡単だった。

早々に見切りをつける農家は正直、いる。

ただ、1ヶ月早く生まれちゃっただけ

それまで親牛が9ヶ月間、懸命に育てた命、

私たちはそれを次につなげたい。

競馬のとあるジョッキーが言った印象に残る話しがある

競走馬は、すきで競走馬として生まれたわけじゃないと、

本気で向き合わないやつは馬に失礼だと。

家畜みんなそうだと思った。

人間の役に立つため、食べるものを生産するために彼らはそこにいる

オニチビ、よく頑張ったね!

ゼーゼー呼吸しながらもよくミルクのんだね。

生まれて6週間で、普通の子牛の2週齢くらいの大きさにはなった。

さぁ行け、次の農家先でしっかり生きて、

立派に肉用牛としての人生を全うしておいでね